2012年度の診療報酬改定についての情報がかなり出揃って来ました。
保険薬局に関してもいろいろと変更になります。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021670-att/2r985200000216ve.pdf
今、我々の間で話題にのぼっているのは、「お薬手帳」のことです。
今回の改定で、お薬手帳は、患者さんに提供したら情報加算をするのではなく、薬剤服用歴管理指導料(以下歴管理料にさせてください^^;)の中に含まれることになったのです。
以前から「薬品情報提供文書」は見せて指導を行わなければならない、とありました。今回は「③ 調剤日、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、その他服用に際して注意すべき事項を手帳に記載すること。」という文言が追加されました。
これは大騒ぎになります^^;歴管理料は患者さんがどのように服薬ができているか、それが薬学的に正しいものであるか、を薬剤師が管理するための技術料でした。これに手帳の加算を包括するってどないやねん。手帳を渡さないといくらきちんと指導しても歴管理料は取れないということかしら?
しかし、私はちょっとだけ違った見方をしています。
今までの手帳加算、「薬剤情報提供料」の扱いを見てみましょう。
「1回の処方せん受付において、医療機関から処方された医薬品の説明を、当該患者の求めに応じて、いわゆる「お薬手帳」に記載した場合において算定される料金。」が薬剤情報提供料でした。
ここポイントです。「当該患者の求めに応じて・・・」
今回の改定では、「薬剤情報提供文書により、投薬する薬剤の情報を患者に提供し、薬剤の服用に関し、基本的な説明を行うこと。」と「調剤日、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、その他服用に際して注意すべき事項を手帳に記載すること。」があります。
患者の求めに応じて・・・ではないのです。
そもそも、歴管理料って結局は医療行政が「あんたたち、最低これくらいやりなさいよ。」という基準であると考えています。つまり、患者の意思とは別に「これからの医療行政的に「お薬手帳」は必要だから持たせなさい!」という行政からの指針が提示された、ということです。
なぜこうなったか?
災害時のお薬手帳の有用性が認められた結果だと思います。あの震災の時に、多くの患者、そして支援医師も、服用している薬が何であるかが分からなかった。多くの災害支援に赴いた薬剤師が「患者さんが飲んでいる薬は何だったか?」を確認する作業に従事しました。そして一定の評価を得ています。
こういった活動が社会的な評価を生み、それが今回の改定に及んでいるのではないでしょうか。
実は、大変誇らしいことです。
国から社会から、「お薬手帳」が認められたのです。それはみんなの地道な活動がベースにあるのです。
さて、この認められた「お薬手帳」を使ったら何ができますか?
退院時に「退院時薬剤情報管理指導料」という点数があります。持参薬管理+入院中に使用した主な薬剤の名称をお薬手帳に記載した上で退院後の薬剤服用に関する指導を行った場合に算定できる点数です。
もし、これを使えば、入院時の薬を手帳に記載、退院時指導を行う→外来にて保険薬局でその手帳を見る→入院時から退院後までの薬の経過がわかる。
まさにマイカルテ運動です。手帳を一冊持つことで、患者さんは薬に関するマイカルテを持つことができるのです。薬薬連携の形が見えてきます。
現在、日本の医療は「急性期医療」と「慢性期医療」に分かれてきています。普段は地域の医療機関で診察をしてもらって、いざというときに大きな病院に行く。そのつながりを確立するように行政は動いています。
お薬手帳はこのつながりをもっと自由にうまく動かせるようになるためのツールになるでしょう。
以前、ある急性期病院の薬剤師さんたちと、化学療法を行う際にお薬手帳を持参してもらえれば、そこに化学療法の内容を記載することができるのにね。というお話をしていました。化学療法にはどうしても副作用がつきものです。身近な保険薬局でその内容を把握していれば、それだけ早く副作用に対応することができます。
みんながお薬手帳を持つことになった。これによって、できること、患者さんに還元してあげられることは、大変増えます。というより、そういう立ち位置で考えなければいけない時代なんじゃないかしら。
あれこれ、面倒だなあ、と思わずに、その成り立ちや原点を見つめて仕事をしなければならない・・。そんな来年度になりそうです。
1月17日・・
阪神大震災の起こった日です。
私は大阪の病院勤務していましたが、正月出勤の代休で休みでした。私の地域では揺れはしたものの、建造物に被害はなく、病院内も点滴などが壊れたくらいで無事でした。ただ私自身は神戸に友人が多かったので、あちこち電話をかけようとしました。が、大阪ですら電話は朝から通じません。まだインターネットも誰もが扱っている時代でなく、携帯電話もありませんでしたので、公衆電話に張り付いて、連絡をした覚えがあります。
その後しばらく、薬剤の欠品に常時悩まされました。点滴は関西の小さな病院に回される数が少なくなり、その後抗生剤や、特定の薬剤が不足しだしました。被災地へ点滴などの薬は優先的に回されるんだと聞いていました。また大阪市内の病院の外来は人で溢れかえりました。被災地の方々が来られたからです。1月ほどたつと、薬品の生産工場が稼働しなくなった、という理由から、また幾つかの薬品が欠品するようになりました。
医師、看護師、卸。みんなと連携して、とにかく患者さんを不安にさせない、治療の中断をさせない。それだけを目的に、うまく物流を回すことだけを考えていたような気がします。
薬剤師は、薬のプロである以上、物流の元締めでもあります。災害の時には、「薬そのもの」がとても大切で、かつうまく回さなければ無くなっていくんだ・・
うまく回すにはどうしたらいいのか?
誠実であること、みんなでひとつ同じ方向を向くこと。これに限る。そんなことを痛感しました。
そして、昨年。東日本大震災。
阪神大震災のことが頭をよぎりました。
今年で17年。神戸は、形としては徐々に復興してきました。東北も同じでしょうか。どちらの震災も常に忘れることはないでしょう。
あけましておめでとうございます。
本年が、皆様にとって良き年でありますように祈念申し上げます。
正月あけから、忙しくてーーーという方も多いのではないでしょうか。
我が薬局は・・まあほどほどのスタートという感じで、おかげで私、少し正月ボケ中かもしれません。
今年は何かとやることの多い年になりそうです。やることが多いということは、それだけ人と接することが多くなり、新しい考え方、新しい気持ちを取り入れることができる可能性があるということです。
先日、ある有名雑誌に載った論文に「45歳以上からは認知力が落ちてくる可能性がある」と発表されていました。
http://www.bmj.com/content/344/bmj.d7622
ええ、そんな若い頃から・・?
そうらしいです。45-49歳の時点で、すでに物忘れがでてくるようです。
このニュースをお伝えすると、二通りの反応が帰ってきます。
「ええ!!どうしよう!?私、きっと認知力が落ちてるわ!!」と焦る人。
「やっぱり認知力って落ちるのよね。忘れないような仕組みを考えなくちゃ。」と納得する人。
仕事に対してより柔軟に対応できるのは・・・後者ですよねえ。
自らを知って、その対策を立てることができることほど、強いことはありません。
中には、「うん、それ感じてたから、忘れないようにメモを買ったのよ。」と先んじておられた方もいらっしゃいました。
さて、私もこれから忘れないような仕組みを考えなくちゃ!です。いろんな人と会う可能性があるのですから、忘れたり年齢のせいにしていたらもったいないですものね。
今年も前向きに精進していきたいと思っております。よろしくお願いします。
メリークリスマス!!
皆様もクリスマスを楽しんでいらっしゃったでしょうか。
わたしは、勉強会の仲間と一緒に大阪中之島公園で開かれていた「光のルネッサンス」を見にいってきました。幻想的で素敵なイベントでした。
さてクリスマスが終わるとあと一週間で年があけます。
来年はどんな年になるのでしょうか。
ここのところで、来年度の医療行政がどう向くかをいろいろと議論されています。我々の仲間うちでも議論のあったことなのですが、薬剤師は今まで「こうやりなさい!」と言われたことだけをやっていればよかった。医師が「調剤しなさい」といわれればやり、患者が「先生に聞いて」といわれたら疑義照会する。その行動が薬物学的に問題がなければそれで良かったのです。
ところが、今の報道などで漏れ聞く話を考えると、どうもそうではないようです。
薬剤師は、薬学的知識をもって、薬を飲んだあとにおこるであろうことを「予測」して「伝え」なくてはならない。その役割を期待されている。そんな気がします。
例えば、あるリスクをもった患者さんに、この薬を飲ませたら・・・この副作用を通常の人より起こす可能性が高い・・から、「○○さん、この薬を飲んで、××が起こったらすぐ連絡してね。」と伝える。
現在、医療の台所、保健はどこも苦しくなっています。簡単な病気であれば保険を使って病院にかからずに、できるだけ自力で治療して欲しい。自力とは「自分のお金で・・」ということです。つまり、薬局というものの重要性がここへきてかなりクローズアップされるわけです。
つまり、単なる頭痛なら病院へいかずに、薬局の薬を飲んで治しなさい。ということになりつつある。
では・・・単なる頭痛・・と決めるのは誰でしょうか。患者さん?最終的には違いますよね。薬局の薬剤師です。保健行政に頼らない医療の担い手として存在することのできるもの=薬局薬剤師です。頭痛の患者さんが薬局に薬を買いにきたときに、「薬を飲んだら治る頭痛だ」と決めて薬を売る・・ところまでが薬剤師の仕事です。
来年・・ではないでしょうが、いずれそのような時代が来るでしょう。
それまでに、私達はもっと病気のこと、薬のことを、今以上に勉強しておかねばなりません。
しかし、これは誰かが教えてくれるよ。。というものではないでしょう。自分で医療者向けの本を読んだり、まとめたり・・そういう自ら学ぶ行動が必要となってくるでしょう。
学ぶか学ばないか・・で、薬剤師、あなた自身の将来はきっと変わってきます。
やっと寒いかな?という気候になってきましたね。もう師走です。来年度の話をしてもおかしくない時期です。
医療関係者には、今年は改正もある年だし・・といろいろと気になってくる時期ですよね。
先日から連日中医協の総会が行われているというニュースを聞かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
中医協、「中央社会保険医療協議会」の略です。
健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する厚生労働相の諮問機関で、この中医協の答申に基づき厚労省は2年ごとの診療報酬の改訂を実施しています。
年末のこの時期には来年の改定のための協議が行われております。昨日行われた総会では医療提供体制についての話があり、薬剤師のポイントとしては「薬剤師の病棟業務」について話があったようです。
実はこのくらいの時期から情報を仕入れておくと、4月に慌てずに済むんだよーと先輩薬剤師から教えられたことがあります。
昔は簡単に閲覧することができなかったのですが、今のインターネット社会では簡単です。
厚生労働省のサイトにもちろん今日の総会における資料も掲示されております。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008ffd.html#shingi2
12月2日にあった総会でもそう感じたのですが、どうやら次に薬剤師が目指すのはやはり「連携」でしょうか。
医師を助けるものとして、医療チームの一員として、地域社会の一員として・・・薬事衛生をつかさどることにより、国民の健康な生活を確保する。
今、連携が叫ばれているのには、もちろん時代の流れもありますが、災害支援での薬剤師の働きも後押しになったのではないかと思われます。
しかし、連携といっても何をしたら良いのでしょうか。今までの業務と何か違うのでしょうか。
そのヒントの一つです。
災害支援ボランティアで活動された先生方から聞いた話ですが、「何を支援しようかと考えた時に、薬剤師法第一条に則った働きをしようと考えた。」
薬剤師法の第1条はこう掲げてあります。
「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」
まさに災害支援では医薬品の供給は医師や他の医療者を助けました。薬剤師にとって当たり前のこと、薬の名前と作用を覚えている、似た薬を確保できる。という仕事は医師たちに一番支持された業務だったのです。
次のステージ、「連携」により、この薬剤師法第一条はとても輝きを増してくるのではないでしょうか。もう一度この条文を読みなおすことで、我々が行う業務を鑑みることができるかもしれません。
糖尿病。みなさんよくご存知の病気のひとつです。
糖尿病は、血糖値が病的に高い状態をさす病名です。高血糖そのものによる症状を起こすこともあるほか、長期にわたると血中のブドウ糖が血管内皮のタンパク質と結合し、体中の微小血管が徐々に破壊されていき、目、腎臓を含む体中の様々な臓器に重大な傷害を及ぼす可能性があり、糖尿病治療の主な目的はそれら合併症を防ぐことにある。糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症の微小血管障害によって生じるものは、糖尿病の三大合併症といわれる。(Wikipedia抜粋)
検査の値としては空腹時血糖(mg/dl) 126以上、 HbA1c(%)6.5%以上(JDS値では6.1%以上)などが目安となります。
病気としては当たり前・・の知識ですよね。
さて、先日参加してきたワークショップで読んだ文献は以下のものでした。
Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials
Rémy Boussageon
BMJ 2011;343:d4169 doi: 10.1136/bmj.d4169
http://www.bmj.com/content/343/bmj.d4169.full.pdf
システマティックレビューという種類の文献で、ある調べたいことの出来るだけすべての論文を集めて統合して検討した、その結果を示した文献です。
この文献のテーマ、調べたかったことは、「Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events 」18歳以上の2型糖尿病の方に糖尿病強化療法を行うと行わないことに比べて死亡率や心血管疾患での死亡、細小血管障害が減るのか?というものでした。
糖尿病強化療法とは、血糖をなるべく低く保つような治療のことです。
研究をしている時点で存在している147の論文から、質の良い論文を研究を13選び統合していきます。13の論文には34533名の患者さんが含まれています。1本の論文ではこうはいきません。
とはいえ、このような統合は自分勝手に行うわけにはいきません。それぞれの論文を統合しても問題ないのかどうかをしっかり吟味する必要はあります。
ともかく・・その結果です。
Intensive treatment did not significantly affect all cause mortality (risk ratio 1.04, 99% confidence interval 0.91 to 1.19) or cardiovascular death (1.11, 0.86 to 1.43).
強化療法を行うのが行わないのに比べて、有意に死亡率や心血管死亡をさげなかった。
Intensive therapy was, however, associated with reductions in the risk of non-fatal myocardial infarction (0.85, 0.74 to 0.96, P<0.001), and microalbuminuria (0.90, 0.85 to 0.96, P<0.001) but a more than twofold increase in the risk of severe hypoglycaemia (2.33, 21.62 to 3.36, p<0.001).
強化療法が有意に下げたのは「致死的でない心筋梗塞発症率、アルブミン尿発症率、」、「低血糖」を有意にあげた。
いや、そりゃあ低血糖はあがるでしょうけど・・。有意差があるのはそれだけ?
この結果に関しては、いろいろと考えることがあるでしょう。異論もあるかと思います。ほとんどの論文が欧米のもので人種差もあります。もちろん血糖が高いということは毒性があるのですから放置しておける問題ではありません。でもこのような臨床研究の結果が出ていることは確かなのです。血糖を今言われている程度に下げても死亡率は下がらず低血糖だけが起こりやすくなる・・・。
どうしましょうね。
ずっと食事、運動、治療とがんばってきた患者さんに、これからどう説明しようか。悩んでます。
今回のワークショップでわかったことは、患者さんに対するのに「確かなものは何もない」のだということです。今までの常識が常識になるとは限らないし、教科書やパンフレットが絶対にあっているという保証もありません。
私たちが行っていることは、正しいのか?本当に患者さんのためになるのか?
私たちにできることは、いまやっていること、常識を疑うことなのかもしれません。
最近の薬剤師の仕事について語られるとき「チーム医療」というのがひとつのポイントとなる言葉だと言われます。昨年春の厚生労働省医政局からの「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進を促す通知」というものから、この言葉が声高に言われるようになったかと思います。
以前から、病院内や在宅の現場でチーム医療なんて当たり前!という声も聞かれますが、もう一度この通知について見直してみます。
チーム医療推進の基本的な考え方については、「目的と情報を共有した上で、医師等による包括的な指示を活用し、各医療スタッフの専門性に積極的に委ねると共に、医療スタッフ間の連携・補完を一層進めることが重要」であるとし、実際に推進する際には、医療機関の実情を十分に把握し、各業務の管理者と担当者の間で責任の所在を明確化し、連携や協力の方法を決定することで、快適な職場環境の形成や、効率的な業務運営の実施に努めるよう求めている。
また、薬剤師については、高度化する薬物療法に、薬剤の専門家として主体的に参加することが「非常に有益」とする一方で、病棟や在宅で注射剤のミキシングや副作用チェックを、「医師や看護師が行っている場面も少なくない」と指摘。薬剤師を積極的に活用すべき領域として、次の業務を示した。
[1]プロトコールに基づいて医師等と協働で薬剤の種類、投与の量・方法・期間等の変更や検査オーダを実施
[2]薬剤選択、投与の量・方法・期間等を医師に処方提案
[3]在宅を含めた薬物療法患者に対する副作用把握や服薬指導等
[4]薬物血中濃度や副作用モニタリング等に基づく医師へ薬剤の変更等を提案
[5]薬物療法の経過等を確認した上で前回処方と同一内容の処方を医師に提案
[6]外来化学療法における医師との協働によるインフォームドコンセントと薬学的管理
[7]持参薬の確認と医師への服薬計画提案
[8]定期的な副作用確認のための分割調剤
[9]抗癌剤等の無菌調製
(以上、2010年5月7日 薬事日報の記事より抜粋)
「各医療スタッフの専門性に積極的に委ねる」のですが、そこに「業務の管理者と担当者の間で責任の所在を明確化する」
つまりは薬剤師はチーム医療の中で、薬の専門家として責任を明確にして業務しなさい。と言われているわけです。
これはとても大変なことです。
うちはチームとは違うから・・と思っていらっしゃいませんか?
例えば、保険薬局に勤務しているとします。近くの医院から処方箋をもって患者さんがやってきました。
調剤して投薬しますよね。それで本当にこの患者さんにその薬剤の種類、量は適格でしょうか?副作用はこの患者さんにどの程度発現する可能性がありますか?その根拠は?医師に問われた時、患者さんに聞かれた時、他の医療者に尋ねられた時、明確に答えられますか。
今回の通知では、そこまで薬剤を管理することが求められてきているのです。
チームじゃないのに?本当にそうでしょうか。
薬剤師は実際に薬を管理し扱います。しかし薬は医師からの処方箋を経てある情報と意味を持たされて、患者さんの健康を守る役割を果たします。つまり処方箋は医師からのメッセージであるわけです。この時点で保険薬局勤務の我々も医師とチーム医療を行っているわけです。
もはや医薬分業の時代ではなくなりました。医薬協業の時代へと突入しようとしているのです。
・・・
さてさて。あれから1年以上がたちました。
みなさんの周りでは、何か動きがありましたでしょうか。
秋らしくなってまいりましたね。
ええっと、実は気候の挨拶ではないんです。
秋になると様々なジャンルの学術大会が多く開かれます。いろんな分野で活躍の方々とは2週間に1度はお会いすることもあるわけです。あら、また会いましたね。の後に、学会日和ですねえ、秋らしくなりましたね・・と続くわけですが・・・。
そんな私の周囲の方々のなかで今密かなブームが
「聞く技術」
という本です。
アメリカで出版され、現在日本でも翻訳本が出ていますが、一口では「問診」の本です。
問診というのは、ドクターの行うことじゃないの?という薬剤師は今ではもういませんよね。患者さんの状態に応じてOTCを選んでさしあげることも、現在の症状に応じて処方薬の説明を行うことも、すべて患者さんへの問いかけから始まります。つまりは、問診、今までの患者さんの状態を把握して、病歴を聞き取り、トリアージ、すなわちある症状に対して鑑別を行う。これは素敵な薬剤師の仕事のうちの一つですもの。
さて、この「聞く技術」という本ですが、疾患別ではなく症状別に構成されています。例えば「頭痛」という単元では、頭痛の病因、診療の開始、重篤な疾患の診断などが項目として示されています。その後、焦点を絞った質問、という項目があり、コンパクトな質問とその答えから考えられること、が表になって示されています。
例えば、質問で「こうした頭痛が起こり始めたのは何歳くらいのことでしたか?」とありますと、考えられることの項は「頭痛の罹患期間が長いほど、良性である可能性が高い。通常、片頭痛および緊張型頭痛は青年期に発症する。」とあります。大変簡単な質問から、様々な患者さんの病歴を得ることができるということです。
このような質問力をどうやって得られるのか?についても、この本は触れています。
面接の方法の話です。
まず、面接には「患者中心の面接」と「医師中心の面接」があり、その二つを統合すれば最適な医師ー患者関係を構築しながら、患者の話も十分入手できるとあります。
患者中心の面接、というのは、患者さんの訴えを明らかにしていくために行われます。「今日はどうされました?」とか「その痛みについて少し話してもらえませんか?」とか「それをどう感じましたか?」とか、患者さんの状態について、ご自分の言葉で語っていただくための面接のことです。
ところが問診はこれだけでは済まないのです。
次に「医師中心の面接」を行います。関連症状とその詳細な情報を得て、患者さんが今まで話していなかったその他の情報を入手して、判断の助けになります。
例えば「どこが痛みますか?痛みは10段階評価でいくつくらいですか?」とか「黒い便がでませんか?」とか。医療関係者だからこそわかる単語や考え方を使って患者さんに質問するわけです。
この本のすごいところは、この医療面接を「患者中心」と「医師中心」の二つに明確にわけようとしたところだと思います。よくお目にかかる「オープンクエスチョン」とかは実は患者中心の面接の技法の一つですね。これだけでは、医療面接は成り立たない。とこの本は伝えているわけです。そして、患者中心も医師中心も、何となくで面接が行えるわけではなく、「技術や訓練が必要」と教えてくれています。
なかなかうまく伝えることができないのですが、実際に服薬指導を行っている時に、「あ、今自分は患者中心だな」「今は、医師中心になってるな」ということを考えながら、自在に両方を行き来すると非常に指導がすっきりしてきます。また、今まで患者さんに尋ねなかったことを「医師中心」の私が尋ねると、患者さんからの情報を多く得ることができるようになりました。
英語の翻訳なのでちょっと読みにくい部分もありますが、少しスキルアップをしたいなあ、と思い立ち、自分の服薬指導を立ち止まって考えてみるにもとても良い本だと思います。
なんだか急に涼しくなり、秋が来たなあ、と思える10月。
1日、2日と神戸にて「医療薬学会」が行われました。
昔はね、病院勤務の薬剤師さんの学会。って感じだったのですが、最近は保険薬局の方々も発表をされており、かなり見ごたえのある学会になっています。
今回、特に感じたのが、ワークショップの多さ。
ワークショップは、通常のシンポジウムなどと違って、実際に参加者が体と頭を動かして行うことができます。一方的に話を聞くだけのものとは違って、参加する私たちは考えたり手を動かしたりせねばなりません。
今回、私もワークショップに2本参加してきました。
一つはPIPCという内科医が精神科疾患の診かたができるようになる教育訓練システムの一部を使って、薬剤師が精神科疾患をひろいあげられるようなツールのトレーニング。
何度も隣の方とジャンケンをして、実際のツールを使った実践をしたので、隣の薬剤師さんとすっかり意気投合してしまいました。名刺交換もして、今度もどこかで会いましょう!なんて盛り上がってきました。
もう一つのワークショップは、褥瘡の局所外用治療の実際。
これからは在宅にも必要となる技術の一つです。
本当の薬やドレッシングテープを使用して、臀部にできた褥瘡の模型の治療を行います。一つのテーブルに6名程度で行うので、自然とみんなで声がでます。「先生、どうやってたっけ?」「こうやったらいいんじゃない?」「ここを押さえるとうまく行きそうだよ!」
褥瘡は薬剤師という薬物治療の専門家の知識をいかすことが最もできやすいものの一つです。軟膏の硬さの違いや使用する薬物が吸水なのか補水なのかの正しい理解によって、治療の完成度が変わってくるからです。
講義の先生が見せてくださったビデオでは、本当に栄養状態の悪い患者さんの褥瘡がぐんぐん治癒していきました。すごい。薬剤師としてまだまだ未熟で学ぶことが一杯あるんだなあ、と素直に感動して帰ってきました。
その他、シンポジウムにしても、ただ聞かせて帰すだけではなく、様々な工夫をして私たち聞く側をその気にさせてくれていました。
このような学会は、実は学会員でなくても参加可能です。参加費はちょっと高めです・・が、普段できないような体験がさせてもらえて、知見を得ることができて、その上友人が増えます。ポスターで自分が興味のあるところにいけば、直に話を聞くことができ、名刺交換させていただけます。
それにしても、今回の医療薬学会は本当にお得だったーー。
9月になって、我が薬局にも薬学部の実習生さんたちがいらっしゃいました。
本音を言うとねー、やっぱり大変です。そりゃあ迎えるにあたって教えるためのマニュアルも作ったし、受け容れるために勉強もしました。でもやっぱり我々は本職の教師ではないので、すごくプレッシャーでした。
それでも、先日のこと。
新薬の説明を他のスタッフと実習生さんが一緒に受講。私は受けることができなかったので、ちょうどいいやと思い、実習生さんに「この薬、なんて説明あった?」っと教えていただくことにしました。
彼女はとても勉強している方で「薬物動態は苦手なんです・・」といいながら、的確にその薬の作用や特徴を私に伝えてくれました。
「へえ、よく分かったわあ。ありがとう。」とお礼を言い、もう一度その薬のパンフレットを見直しますと、何かおかしい。
「ねえ、今の説明はとてもよく分かったし、納得したんだけど・・その説明でいくと臨床では患者さんにこの病名で使うことが目的になるじゃない?でもこのパンフレットにそれがどのくらい効果があるのか?は書かれてないんじゃないのかなあ。」
「??」「だからね、この表にはこの病気がどのくらい治りました。って書かれてないのよ。」「あっ!!」
彼女は大きくうなずきます。
よくある薬のパンフレットに有意差が書かれた図が載っていますが、何の結果か?を見ると、薬の効果の有意差であって、病気が治ったかどうかの有意差ではないことがあります。例えば血圧を下げる効果は有意差があったけど、脳梗塞の予防にはならなかったとか。
我々薬剤師はつい薬の効果の強弱だけでその薬を評価しがちですが、薬は患者さんが服用して、その後期待した効果が出るかどうかが本来の評価の分かれ目です。
「そこを評価しないと、例えばACE阻害薬を腎臓の悪い方が服用する・・私血圧高くないのに何で薬を飲まなくちゃいけないの?って患者さんは不安に思っちゃうでしょ。薬の評価は薬剤師の大切なお仕事ですからねえ。」
「はい。本当に。」彼女はとても嬉しそうに返答をしてくれました。
「・・・私、今回が実習初めてなんです。でも来てよかったと思ってます。」
「ほう。」「本当は将来は学校に残ろうかなあ、って思ってたんです。でも、実習に来て今まで勉強した薬がこうやって使われていくんだ、というのを見せてもらえたら、こういうところで働きたいなあって、すごく思えました。」
そりゃあよかった。
じゃ、これからも薬剤師のお仕事を実践して見せてあげましょう。