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もっと気軽に論文よめないかな?

なるべくなら、雑誌やインターネットの記事を鵜呑みにしないで、元の論文にあたったほうがいいよ。
先輩からそう言われたことのある薬剤師さんもいらっしゃるんじゃないでしょうか。

そりゃ道理なんですけどね。元の論文って言われても、雑誌に出所が書いてなかったり、書いてあっても新しければ、会員でなければ全文は読めないものがほとんどです。私たちが目にできるのはAbstract,抄録だけ・・ということもしばしばでしょう。
私も、本当は全文読んだ方がいいと確信しています。なぜなら抄録では曖昧に、(どちらかというと作者の意図通りに)かかれていることが、本文にはきちんとデータとして示されていることが多いからです。それでも物理的に読めないものは仕方がない。もっと気軽に論文に目を通すことはできないのでしょうか。

そこで、一計。

Abstractは一生懸命読みましょう。できればEBMの考えでどの患者さんに適応なのか?どういう目的で行われた研究なのか?を考えながら読むと、理解しやすいです。
その後、分からないことがたくさん出てくると思います。その疑問を、全部論文の横にでもメモっておきましょう。それを一つずつ調べていくのです。そうやって得た知識は、いろいろなものと結びついていますので、あとで思い出しやすいし、使いやすい知識になります。
これならば大量の英語を前にげんなりすることも少ないでしょう。
なぜなら、Abstract、抄録だけならば、結構日本語に訳してあるからです。

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例えば・・・
Effect of Clopidogrel Added to Aspirin in Patients with Atrial Fibrillation
2009.5.14のNEJMの記事がありました。

「The New England Journal of Medicine」はアメリカのもっとも有名な医療論文掲載雑誌です。日本では南江堂から年間購読することができます。この南江堂のサイトには今までの NEJMの目次と、主要なものは抄録だけですが、日本語訳があります。読み方さえ分かれば、これでずいぶんたくさんの医療情報を得ることができます。

例えば・・
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/xf2hm.htm

心房細動患者に対するアスピリンとクロピドグレルの
併用療法の有効性

Effect of Clopidogrel Added to Aspirin in Patients with Atrial Fibrillation

The ACTIVE Investigators

# 背 景
心房細動患者の脳卒中リスクはビタミン K 拮抗薬により低下するが,多くの患者はその適応にはならないと考えられ,代わりにアスピリンを服用している.アスピリンにクロピドグレルを追加投与することにより,心房細動患者の血管イベントのリスクが減少するという仮説について検討した.
# 方 法
心房細動で脳卒中のリスクが高く,ビタミン K 拮抗薬療法が適応とならない患者 7,554 例を,アスピリンに加え,1 日 1 回クロピドグレル(75 mg)を投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要転帰は,脳卒中,心筋梗塞,非中枢神経系塞栓症,血管系の原因による死亡の複合とした.
# 結 果
追跡期間中央値 3.6 年で,主要血管イベントはクロピドグレル群 832 例(年 6.8%),プラセボ群 924 例(年 7.6%)で発生した(クロピドグレル群の相対リスク 0.89,95%信頼区間 [CI] 0.81〜0.98,P=0.01).この差は主に,クロピドグレルにより脳卒中の発症率が低下したことによるものであった.脳卒中は,クロピドグレル群 296 例(年 2.4%),プラセボ群 408 例(年 3.3%)で発症した(相対リスク 0.72,95% CI 0.62〜0.83,P<0.001).心筋梗塞は,クロピドグレル群 90 例(年 0.7%),プラセボ群 115 例(年 0.9%)で発症した(相対リスク 0.78,95% CI 0.59〜1.03,P=0.08).重大な出血は,クロピドグレル群 251 例(年 2.0%),プラセボ群 162 例(年 1.3%)で発生した(相対リスク 1.57,95% CI 1.29〜1.92,P<0.001).
# 結 論
ビタミン K 拮抗薬療法が適応とならない心房細動患者では,アスピリンにクロピドグレルを追加投与することにより,主要血管イベント,とくに脳卒中のリスクが減少したが,重大な出血のリスクは増加した.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00249873)

本論文(10.1056/NEJMoa0901301)は,2009 年 3 月 31 日に NEJM.org で発表された.
(N Engl J Med 2009; 360 : 2066 - 78 : Original Article)


いつもの私の適当な訳じゃなくて・・・さすが、美しい訳ですね。
いつものように、なんのための論文なのか・・?を探るのも簡単そうですね。

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P(どんな人に):心房細動で脳卒中のリスクが高く、ビタミンK拮抗薬療法が適応とならない患者。
E(何と比べて):アスピリンに加え、クロピドグレルを75mg投与するのと
C(何をするのは):アスピリンとプラセボを投与するのは
O(何が違うのか):脳卒中・心筋梗塞・非中枢神経系塞栓症・血管系の原因による死亡の複合がでやすいか?

ビタミンK拮抗薬って・・ワーファリンのことですよね。
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ここで疑問が生じました。
1:心房細動って脳卒中の他の原因と何が違うんだろう?予後が悪いとかあるのかな?
2:ビタミンK拮抗薬の適応とならない患者って・・どういう人?クロレラ飲んでる人とか?んなこたーないか。ワーファリン抵抗性の患者さんとかも存在するようですが・・。

横の方にメモっておきます。
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結果を見ます。
一番重大そうな脳卒中の結果は・・・
クロピドグレル群296例。プラセボ群408例 相対リスク 0.72,95% CI 0.62〜0.83,P<0.001 有意差ありで、プラセボ群の方がより脳卒中が起こりました。計算すると1人の脳卒中を予防するには34人が4年ほどこの治療を受ける必要があるわけです。
心筋梗塞も
クロピドグレル群 90 例,プラセボ群 115 例相対リスク 0.78,95% CI 0.59〜1.03,P=0.08 ちょっと微妙ですが、プラセボ群の方が起こっているようです。
で、重大な出血は
クロピドグレル群 251 例,プラセボ群 162 例 相対リスク 1.57,95% CI 1.29〜1.92,P<0.001、これは有意差ありで、クロピドグレル群の方がより起こっています。計算すると42人に1人は両剤を4年ほど併用すると、重大な出血を起こす可能性があるわけです。----------------------------------------
最後の結果はどうでしょう。当然な感じもするでしょうね。
そこでまた疑問がわきました。

3:重大な出血をした場合、この患者さんはどうしたのだろう?治療は中断したのだろうか。
4:そもそも重大な出血をする可能性のある、この治療を長く続ける意味はあるのだろうか?
5:クロピドグレルではこの結果だった。チクロピジン+アスピリンを考えたらどうなのだろう。
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何か、他に浮かんだ疑問はありませんか?

答えは、本文に書いてあるかもしれませんし、ないかもしれません。そもそも答えがあるかどうかも分かりません。
でもそれを考えることによって、より論文への理解、治療法や薬剤への理解が深まります。それはどこかの時点で必ず患者さんの疑問に答えることができるでしょう。

記事投稿日:2009年06月02日 | 記事一覧へ